コトラーのニーズの階層化を意識して会話しよう

「購入後のイメージをさせる」っていう販売テクニックがあります。
どういう手法なのでしょうか。

皆さん、クルマの販売員だとしましょう。
ある日、店に、小さな子供を連れたアラフォーの男性がやってきました。様子を見ていると、ワンボックスカーを買うかどうか悩んでいるようです。
さて、ここで「購入後のイメージをさせる」っていう販売テクニックを使って、営業してみましょう。

「購入後のイメージ」ってことは、ワンボックスカーを買った後の「将来」ですよね。だから、お客に、ワンボックスカーを買った後の将来の姿をイメージさせればいいんです。どういう営業トークを繰り広げますか?

私なら… この男性、小さい子供を連れているので、「これを買えば、家族でキャンプにも行けますよ。このスペースにバーベキューの用具を積んで…」のような感じの営業トークします。なぜ、こういう営業トークになるのでしょうか。
この販売テクニックを、もっと深く見ていきましょう。

ニーズを叶えるためのウォンツを提案

私は学者じゃないので、正確なことはわかりませんが、きっとこの販売テクニックって、お客の「ニーズ」を叶えるための「ウォンツ」を教えているのではないかなと思うわけです。

※)ニーズとウォンツの違い
たとえば、「油っぽい美味しいものを食べたい」ってのがニーズで、それに応えることができる「中華料理」がウォンツになります。ニーズは根本にある欲求で、ウォンツはそれを叶えるための手段(商品)というところでしょうか。だから、ウォンツは「ラーメン」でもいいわけです。

小さな子供がいて、でも、仕事でなかなか家族サービスできなくて…「家族サービスしたい」って考えているアラフォー男性、多そうですよね。実際、このアラフォー男性、休日に、小さい子供を連れているので、「家族サービスしたい」ってニーズがあるんじゃないかなと考えたわけです。
そこで、私は目の前にあるワンボックスカーならば、そのニーズを叶えることができると提案したわけですね。言い換えるなら「家族サービスしたい」ってニーズを叶えるには、「クルマ」という手段(ウォンツ)があるよと教えたわけです。

ちなみに、このアラフォー男性が、全く燃費だとか、エコだとかに興味が無ければ、「他社に比べて燃費が…エコが…」なんて感じで営業トークを繰り広げても、アラフォーの男性の心は動きません。小さい子供を連れているのだから、そういう賭けにでるのではなく、無難な家族サービスというニーズに訴求しようと考えたわけです。

というわけで、「購入後のイメージをさせる」という販売テクニック、イメージできたでしょうか。

実際、このテクニック、かなり有効で、販売などの商売だけではなく、結婚詐欺師、人間関係など…幅広く使われています。

スポンサード リンク


コトラーのニーズの細分化で、正確にニーズをとらえよう

このテクニックをマスターしたいところですが、実際は、なかなか使いこなせません。
だって、ニーズって一言でいっても、一体何なのかその正体がわからないためです。
そこで、私がお勧めするのは、コトラーのニーズの階層化です。
これを頭に入れておけば、ターゲットのニーズを把握するのに役立ちます。

<コトラーのニーズの階層化>
■明言されたニーズ:口に出しているニーズ
■真のニーズ:望んでいること
■明言されないニーズ:期待していること
■喜びのニーズ:驚き
■隠されたニーズ:周りの反応

どういうことかイメージしにくいと思うので、例をあげてみます。
あなたは、美女を口説きたい医者だとします。美女は「何が何でも医者と結婚する」と思っているものの、この美女には、色々な医者が群がっています。どうやって口説きますか?「購入後のイメージをさせる」を使ってみましょう。
※)「医者と結婚したい美女」を口説くということは、美女に、「自分(医者)」という商品を購入させるのと同じです。
※)もっというなら、口説くということは、美女のニーズを考えて、「そのニーズを叶えるウォンツは自分という商品」だとわからせることです。

「私は医者です」っていっても、その女性に群がっている医者も、同じように言うので、あんまり効果はないでしょうね。だから、コトラーのニーズの階層化を思い浮かべるんです。

(例)医者と結婚して玉の輿を狙っている美女
■明言されたニーズ:口に出しているニーズ「医者と結婚したいわー」
■真のニーズ:望んでいること「自分では努力することなく、楽したいわー」
■明言されないニーズ:期待していること「毎月、好きなものを買いたいわー」
■喜びのニーズ:驚き「私の両親も大切にしてくれないかしらー」
■隠されたニーズ:周りの反応「ママ友達に、『主人は医者なの』って言ったら、『凄いわね!』って賞賛されるわねー」

上記のようなニーズを叶えるには、自分というウォンツしかいないって説得すればいいんですよね。 ただ、名言されたニーズ(医者と結婚したいわー)に答えるウォンツ(自分=医者)だけだと、力不足なので、他のニーズにも訴求するようにします。

というわけで、「幸せな顔をしている女性の顔を見るのが好き。でも、忙しいから、せめて毎月好きなものを買って、幸せな顔をして欲しいと思ってしまうんだよね。モノで解決するってのに、すごい罪悪感を感じるんだけど」だとか、「家族のことを大切にしている女性が好き。ボクも、スキになった女性の家族を大切にしたい」だとか、言えばいいってわかりますよね。
こうやって、ターゲットのニーズを把握して、できるだけ、多くのニーズを言い当てることができれば、説得するチカラは強くなります。

スポンサード リンク


クルマの販売の例をコトラーのニーズの細分化にあてはめてみる

話を先ほどのクルマの販売の話に戻します。
もっと営業トークして、アラフォー男性に、クルマを買わせようと思えば、どうすればいいのでしょうか。
この男性の「隠されたニーズ」を考えると、「子供に『スゴイ』って思われたい」ではないでしょうか。
そのニーズを刺激しようと思えば、「クルマを買って、キャンプに行くと…(省略)…お子様から、『パパってスゴイ!』って言われますよ」なんて言えばいいってわかります。
だから、私なら、以下のような営業トークにします。

「このクルマを買えば、家族でバーベキューができますよ。ここを使えば…(省略)…Aさんが、バーベキューのセットを組み立ててる姿をみれば、お子様、きっと『パパってスゴイ!』なんて思うんじゃないでしょうか」

目の前にいるアラフォー男性のニーズを、できるだけ掘り起こして、その様々なニーズを叶えることができるのが、自社のクルマだよって言うわけですね。

…何が言いたかったのかというと、コトラーのニーズの階層化を頭に思い浮かべれば、様々な営業トークを思い浮かべることができるってことです。コトラーのニーズの階層化、使えそうですよね。

ただ、ニーズは、きちんと市場調査して探らないといけません。「この人は、きっとこう思っているだろう」という自分の勝手な想像だと失敗してしまいます。
ちなみに、真のニーズや、隠されたニーズって、人間の欲望そのものの場合もあるので、そこをストレートに刺激すると、いやらしくなりがちなので、回りくどく言うなどの工夫も必要です。

「人の思考パターンを読む私の方法」のトップページ