人は、受けた好意を忘れる生き物

前に「好意」の話を書きましたが、今回は別の話を。

「昔、バイトでシフトを変わってやった時、スゴイ感謝しているとか言っていた癖に、俺がシフトを変わって欲しいと言ったら、断ってきやがった!」

よく聞く話ですよね。
なぜ、このようなことが起きるのか、考えてみましょう。
怒っている人をAさん、Aさんの頼みを断ったのをBさんとします。
というわけで、以下の部分に注目します。

「昔、バイトでシフトを変わってやった時、(Bさんは)スゴイ感謝しているとか言っていた」

昔、Bさんは本当にAさんに感謝していたと思いますか?
それとも、Bさんは「感謝している」と嘘をついたのだと思いますか?

私は、Bさんは素直に、Aさんの「好意」に感謝していたと思います。
では、なぜ、Bさんは、昔、Aさんの好意に感謝していたのに、Aさんの頼み事を聞かなかったのでしょうか。

それは、「好意」は減少していく為です。

Bさんは、「昔」は、Aさんの「好意」に感謝していて、「今度、Aさんが困っていることがあれば、手助けしよう」と思っていたはずです。 つまりAさんの「好意」に対して「好意」で返そうと思っていたわけです。 でも、長い月日が経ち、Aさんへの「好意」が減少していってしまったんでしょうね。

<昔のBさん>
Aさんの好意に感謝!Aさんがシフトを変わりたいなら、いつでも変わるぞ!

<今のBさん>
Aさんから好意を受けたっけ?Aさんがシフト変わりたいって言っているけど、なぜ、俺が変わらないといけないんだ?

ちなみに、Bさんだけが「不誠実な人」というわけではありませんよ。
多くの人は、気がついていないだけで、Bさんのようなことをしてしまっています。
もっというなら、「Bさんって不誠実」と思っている、あなたも、Bさんと同じ事をしていると思います。
まあ、ここは例え、私が「あの時、あのようにしたのは、Bさんと同じじゃない?」って言っても、なかなか認められないのが人間という生き物だと思いますが。
ここから何が言えるのかといえば、「与えた好意を回収するのは、お早めに」です。

携帯の解約で不満をもつ人が多い理由

商売でいうと、例えば、今の携帯電話の商売の方法を真似したら、ダメということではないでしょうか。
携帯電話は、ある意味、インフラなので、あんな殿様商売でも通用すると思うんですよね。 どういうことか?

携帯電話を契約するとき、「他社からの乗り換え優遇(1万円プレゼント)」「本体0円」などがあるじゃないですか。
「優遇、割引=好意」を与えてくれたわけですので、はじめは「いい会社だな」と感謝しますよね。

で、1年くらい経ち、「もういいや」と思った頃には、遠の昔に、優遇や割引してもらった「好意」なんて忘れているわけです。 それで、解約しようと思えば「解約金」。
最初に割引や優遇があるので、解約金を支払っても、本当はプラスマイナス0円かもしれません。 しかし、人って「好意」はすぐに忘れますが、「痛み」は忘れないんですね。 気持ち的には、最初の好意が消え去り、最後に食らった解約金、つまり痛みで、「最悪な会社」という印象を植え付けられるわけです。

この話が実感できない場合は、以下のように考えると、「なるほど」と思うのではないでしょうか。
明らかに、Aは苦痛ですよね。収入は同じなんですけどね。

■A:出版して、200万円、仮払いの印税を受け取る→半年後、売れなかった分の違約金130万円を支払う
■B出版して、50万円、仮払いの印税を受け取る→半年後、売れた分のお金を20万円貰う

ただ、クレジットカードなどで、自動で引き落とされる場合は、本人の自覚が薄いので、今回のことはそれほど影響しないと思います。なので、割賦販売みたいに、どうしても「後」に「痛み」が来る場合は、銀行振り込みじゃなく、銀行引き落とし、クレジットカード払いがいいってことですね。
誠実に商売したいと考えていれば、「毎月、私のサービスに満足しているなら、銀行振り込みなどで、自らの手で入金して欲しい」なんて考えるでしょうが、誠実かもしれないですが、人の心がわかっていないのでしょうね。
一つのサービスに満足し続けさせるのって、かなり至難の技ですから、「最初は、顧客は満足させて貰っていると思っている→顧客は好意を貰っていると思っている→時間が経つと、満足度が下がる→でも、毎月、支払いという「苦痛」がある→もう嫌!なんて極悪な会社なの?」ってなるのではないのかなと。
ちなみに、今の携帯電話の業界に参入するには、「他社乗り換え優遇」「簡単に解約できる」「解約金なし」じゃないでしょうか。ユーザーの不満が強ければ強いほど、新規参入の壁が下がるものですし。

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